【最愛婚シリーズ】極上CEOにいきなり求婚されました
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その日、わたし森安芽衣子(もりやすめいこ)、三十三歳――は並々ならぬ決意でロッカールームに立っていた。
目的は後輩、赤城ひより……じゃなかった、結婚して皆川(みながわ)ひよりになった彼女のロッカーを誰よりも先に譲り受けるためだ。
わたしにはもう……この方法しかないのだからっ!
「ひより~そのロッカー、わたしに譲って! お願い」
結婚して彼についてニューヨークに向かうことになったひよりは、本日をもって寿退社する。
その彼女が使っていたロッカーが【結婚ロッカー】だ。
「い、いきなり……どうしたんですか?」
きょとんとした彼女に、そのロッカーの話を聞かせた。
実はずーっと大昔、わたしがまだフレッシュな(?)新人だった頃。
当時の先輩からその【結婚ロッカー】なるものの噂を聞いていた。
そのころはおめでたいことに、彼氏がいる自分には関係のないことだと思っていたから軽く聞き流していた。
しかし今こんなに切実にこのロッカーにあやかることになろうこととは……あの頃真剣に聞いていなかった自分を殴りたい。