【最愛婚シリーズ】極上CEOにいきなり求婚されました
それにこれは〝ただの噂話〟ではないと確信している。ひよりの前にこのロッカーを使っていた後輩の尾関恵麻(おぜきえま)もとんとん拍子に結婚が決まった。
これはもう真実だと思わずにはいられない。
いや、わたしは今そんな〝神頼み的なもの〟にすがりつきたくなるほど、窮地に立たされていた。
「なんか、にわかには信じがたい話ですけど……わたしの後は誰も使う予定がないので、芽衣子さん使ってください」
「ありがとう! 恩に着るわ」
嬉々としてロッカーの整理を手伝うわたしを、ひよりはクスクスと笑いながら見ている。
「でも、芽衣子さんロッカーに頼らなくても素敵な出会いがありそうなのに」
「そうも言ってなられないのよ、この歳だしね」
三十歳になったとき〝とうとう〟という思いがあった。
しかしそれからひとつ、ふたつと、歳を重ねて「もう一年過ぎたの……?」という気持ちだった。
ぼーっとしていたらあっという間に時間が経ってしまう。
それにどうしても結婚にこだわる理由ができてしまったからだ。
「結婚してからも色々あるでしょう。仕事をどうするかとか、子供の問題とか……親のこともあるし。年齢や体のことでリミットがあることも多いし」
後輩の門出の日にため息をつきそうになって、あわてて引っ込めた。
暗くなりそうな会話を切り替えようと努めて明るい声を出す。