【最愛婚シリーズ】極上CEOにいきなり求婚されました
自分に突っ込みをいれつつ、服のありかをキョロキョロと探す。
ソファにひとまとめになっているのを発見した。
あとは彼がバスルームの中に入った瞬間に速攻で着替えて――。
「待ってるから、早く来てね。俺、待つのあんまり得意じゃないから」
「は、はいっ!」
急に振り向いた彼に驚きビクッとしてしまう。
計画ばれたのかと思って驚いた。
「いいお返事」
そう言って鼻歌混じりにバスルームに消えていった彼の背中に「ごめんなさい」と心の中で謝る。
そしてわたしは目にもとまらぬ早さで服を身につけ、財布から二万円を出してテーブルの上に置いた。
そのまま出口に向かおうとしたけれど……、思い立ってデスクの上に置いてあるメモにペンを走らせた。
【ありがとう、楽しかった】と。
そしてわたしは、急いで部屋を出た。
その後彼の匂いが染みついた洋服に身を包み……色々なことを思い出しながら家路についた。
ハプニングだったとはいえ、昨日バーで彼と出会えて良かった。
きっとあのままひとりで過ごしていたら、落ち込んだ週末を過ごしたに違いない。
もう二度と会わない相手だとしても、同義的にはまちがっていることだとしても、楽しかったのは嘘ではない。
ひとつまた大人の階段を上った――いや、とっくに登り切っている歳なんだけど――それでもひとつの経験として自分の胸の中にしまっておくことにした。