【最愛婚シリーズ】極上CEOにいきなり求婚されました


内線は、店頭の受付からだった。

『北村(きたむら)さまという、男性のお客様がお見えです』

「キタムラ?」

記憶にない名前だ。それに今日は店内で会うアポイントはないはず。

誰からかわからないけれど、呼ばれているからには出ないわけにはいかない。

「すぐに行きます」

受話器を置いてすぐに店頭へと向かった。

そして一歩足を踏み入れるなり「ひぃ」という情けない声が口から漏れる。

ど~しているのよぉ。

椅子に座ってスマートフォンを眺めているのは、間違いなくケイトだった。

比較的年齢層の高い店内で、若くて長身の彼は目立っていた。

いや、若者の中でもあれだけ整った容姿の持ち主ならば、皆に注目されるだろう。

目が合いそうになって、慌ててしゃがんでカウンターの下に隠れた。

どうしよう……、あ~どうしたらいい。

頭を抱えるわたしを、同僚たちは変な目で見ている。

しかし今のわたしはそれを気にしている暇などなかった。

こそっと中に戻って居留守を使う? それしかない。

かがんだままゆっくりと踵を返そうとしたときに、ケイトの声が聞こえてくる。

「あ、……ちょっといいですか?」

どうやら受付をした女子社員に声を掛けたみたいだ。

「はい。いかがいたしましたか?」

彼女はカウンターの下に隠れているわたしをチラッと見た。
わたしは人差し指を唇にあてて「シー」というジェスチャーのあと、手をバッテンにしてわたしの存在を彼に気づかれないようにと必死にアピールする。
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