【最愛婚シリーズ】極上CEOにいきなり求婚されました
彼女は訝しげな顔をしていたけれど、とりあえず意図は把握したのか、わたしのことは隠したまま応対してくれた。
「さっき、森安さんにお客様って言ったでしょう? あれ違うから。俺、客じゃないの。彼女の結婚相手」
ぎゃー、いったい何言い出すのっ!
「ちょっと、待ったー!」
慌てて声をあげて、立ち上がる。
店内にいたお客様の視線が一気に集まって、じんわりと汗をかいた。
頭を下げながら、わたしはケイトの前へと歩み寄る。
彼の前の前にいた女子社員が、驚いた顔でわたしとケイトの顔を交互に見ていた。
ああ……どうしてこんなことに。
頭を抱えながら彼女に「ありがとう」と伝えて、席を譲ってもらう。
椅子に座ると「コホン」と小さな咳払いをした。
カウンターの中のバックオフィスの注目がすべて自分に向かっているのが分かる。
視線がグサグサとつきささっていた。
パーテーションの中で隠れるようにして座ると、ケイトがにんまりと笑った。
「やっと出てきてくれた。効果てきめんだったね。森安芽衣子さん」
「ちょっと! わかってたなら言えばいいじゃないのっ」
それとは知らずに、コソコソ隠れていたなんて恥ずかしい。
「俺に会うのをためらってるみたいだったから、出てきやすいようにしてあげたのに」
「別に頼んでいません」
思いっきり睨んだけれど、彼はカウンターに肘をついてなんだかうれしそうにしている。