【最愛婚シリーズ】極上CEOにいきなり求婚されました
〝ホテル〟なんて単語が出てきたら、職場での噂話を自ら提供するようなものだ。

彼は焦ったわたしを見て、くっくっと笑っている。本当にいい性格している。

しかしここで文句を言おうものなら、この針のむしろの状態が続くことになる。

わたしは黙って手を差し出した。けれど彼はだまったままニコニコ笑っているだけだ。

結局呆れたわたしが話をすすめなくてはならない。

「わざわざ持ってきてくださって、ありがとうございました」

お礼を告げたあと、再度手を差し出した。

けれど彼はさっきまでの笑顔をひっこめて、途端に不満顔になる。

「それだけ? なんか返す気失せちゃった」

「なに、言ってるのよ。いいから返しなさい」

人が下手(したて)に出ていれば、いい気になって。

「ダメ。気が変った。返して欲しければデートしよ」

「はああ?」
< 41 / 129 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop