【最愛婚シリーズ】極上CEOにいきなり求婚されました
呆れて変な声が出た。それも結構なボリュームで。社内の人の注目が強くなる。

困り半分呆れ半分のわたしをよそに、ケイトはカウンターに置いてあったメモにさらさらと場所と時間を書き留めた。

「仕事終わったら来て。ここで待ってますから」

そういって立ち上がった彼に「連絡先は?」と聞く。行けなくなったと断るつもりで。

「別に必要ないでしょ? どうせスマホないんだから。じゃあ」

極上の笑みを浮かべたケイトを見て、社内の女子社員達が色めきだつ。

しかしわたしはそれどころではなく、自動ドアをくぐるケイトを追いかけようとして立ち上がった。

「いたっ……」

ガコンと勢いよく足元にあるゴミ箱を蹴り上げてしまった。

それを慌てて片付けてから表に出たけれど、すでに彼の姿は街の雑踏の中に消えてしまっていた。

「ああっ、もう!」

髪をかき上げて声を上げたわたしを、街ゆく人が訝しげな目で見ていた。
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