【最愛婚シリーズ】極上CEOにいきなり求婚されました
第一章 わたしが結婚したいわけ
第一章わたしが結婚したいわけ

仕事終わりカフェバーで注文したローストビーフのサラダにも手をつける気がせず、目の前にある赤い皮の手帳を見て「はぁ」と盛大なため息をついた。

「また……ダメだった」

そしてもう一度ため息。幸せが逃げていくというけれど、そもそも今のわたしにそんなものがあるのかどうかでさえ、疑いたくなるような惨状だ。

いや、しかし……昨日のお見合い、あれはなかった。

どうして、お見合いの席で筋肉自慢されないといけないの?

好きな料理を聞いて、プロテインの味を返されたらどういう反応をすればよかったわけ?

結婚相談所から紹介された相手が、ホテルのティールームに現れた段階ですでにやばいとは思っていた。

しかし勝手に帰るわけにはいかず、お決まりの自己紹介からはじまり……もう苦痛でしかなかった。

相手の印象として残っているのは、ぴっちりとしたTシャツの下でピクピクと動いている大胸筋だけだ。

別に体を鍛えるのが趣味というのがいけないわけじゃない。

でもTPOを考えられないのはいかがなものだろうか。

帰宅後すぐに、相談所にはお断りのメールを送った。

すぐに電話がかかってきて、ただでさえダメージの大きなお見合い後だったのにさらに追い打ちを掛けられた。
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