【最愛婚シリーズ】極上CEOにいきなり求婚されました
給湯室でコーヒーを淹れ、行儀が悪いがそこで立ったまま飲んだ。

人があまり来なくてリフレッシュするのにいい場所なのだ。

それもこれも、ケイトのおかげかもしれない。

あれから何度となく彼に強引に誘われ、何度かデートに付き合った。

彼と約束のある日は待ち合わせまでに仕事を片付け、少しだけどおしゃれをして出かける。

ケイトと会う日のロッカーの鏡で帰り支度をする自分の顔はいつもうれしそうだった。

彼にはまるのはまずいって分かっているんだけどな……。

おかげで婚活などほとんどしていない。

紹介所からのお見合いも今は少しお休みしたいと担当者に伝えた。

しかし……彼はいったい何者なんだろう。

これだけ頻繁に会っているのに、彼について知っていることはニューヨーク帰りということと電話番号だけ。

仕事を聞いても「今は長い夏休みみたいなもの」なんて言っていたな。

それってニートってこと? でもお金は持っているようだ。

今までだって実は一度もわたしが支払ったことはない。

最初のホテル代だって、映画から帰ったあとバッグから二万円がポロリと出てきた。だまって返してきたのは、わたしが固辞するのを分かっていたからだろう。

もしかして……ホストとか。お金持ちのマダムに飼われていて多額のお小遣いをもらっているとか。

いやホストならまだいい。詐欺師だったら? 

最初は金払いがよくて、後々お金をかしてなんて言ってきたらどうする?

体目当て……は、ないか。

色々考えても、どれもこれもしっくり来ない。

きっと本人に聞いても、うまくはぐらかされるに違いない。

「いったい、何者なの?」

つぶやいた後、カップの中身を飲みほした。
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