【最愛婚シリーズ】極上CEOにいきなり求婚されました
熱いシャワーは凍えた体を温めてくれた。

頭からシャワーを浴びながら、これからどうするのか考える。

そもそも、こんなホテルに滞在するって……ケイトってば何者なの?

マダムに飼われているってレベルじゃないわ。人の良さそうな彼だから犯罪の片棒を……ってそこまで間抜けじゃないと思いたい。

知り合いがアメリカ大使だということから、育ちはいいのだということは分かるけれど、あの日『その日暮らし』と大使が言っていたことを思い出す。

ホテル暮らしって、その日暮らしって言葉にぴったりね。

でも毎日仕事をしているわけじゃなさそうだし、考えれば考えるほどよくわからない。

一番考えられるのは、親のすねをかじっているというのがしっくりくるんだけど。

かといってそういう人達によくある、お金を持っていることを鼻に掛けるような態度もない。

いや、今はそんなこと考えている暇はないんだった。

もちろん彼自身のことについても気になるのだけど、今、可及的速やかに解決しなくてはいけないのは、この状況だ。

方法がなかったとは言え、やっぱりホテルについてきたのはよくない。

初めて会ったときとは違う。あのときはお酒に酔っていて勢いでそうなってしまったけれど、今日は違う。

意識だってはっきりしているし、何しろわたしが本気で嫌じゃないのがマズイ。

だからって、なし崩し的にああいうことをするのは違う気がするし。

何とかそういう雰囲気にならないようにしなくては。

あーどうする? わたし。

ぐるぐると考え続けていると、コンコンとノックの音が聞こえた。

「なかなか出てこないけど、平気? 手伝う?」

「だい、大丈夫だから、手伝い、いらないからっ!」

「そう、残念」

笑い声が小さくなって、ケイトが出て行ったことがわかると、また乗り込まれたらたまったものじゃないと思い、素早くシャワーを浴びてバスルームを出た。

ふかふかのバスローブに身を包み、髪を乾かしているとコンコンとノックの音が聞こえた。
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