【最愛婚シリーズ】極上CEOにいきなり求婚されました
自分だけがものすごく意識をしてしまっているような気がして悔しい。

ふと思いたってガウンの中のケイトの手に自分の手を添えた。するとすぐにわたしの手をぎゅっと握ってくる。

「狸寝入りなの?」

「ん? どうですかね」

特にわたしの抗議を取り合うつもりもないようだ。

回された腕にさらに力がこもり、体がぴったりと重なる。お互いの間にはガウンだけしかない。それがすごく邪魔に感じた。

そんなこと思っちゃいけないのに。

超えてはいけない一線がそこにちゃんとあるのだ。だからいくら心地よくても、そこを踏み越えるべきではない。

わたしは彼にふさわしくないんだから。

わたしが彼の胸に素直に飛び込めないのは、彼がわたしの結婚条件に当てはまらないことだけが理由じゃない。

そんなことは……自分に対する言い訳だって気がついた。

それよりもむしろ、彼が魅力的すぎて……わたしは彼に不釣り合いだと思えるからだ。

いつだって彼のまわりの女性は、彼を放っておかないはずだ。

今はどうしたことかわたしに対して興味があるようだけれど、そんなものは一瞬にして冷めてしまうだろう。そうなったときに、傷つくのはきっとわたしだ。
< 83 / 129 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop