【最愛婚シリーズ】極上CEOにいきなり求婚されました
「じゃあ。さようなら」

そう言って部屋を出て行ってしまった。

――サヨウナラ

『じゃあ、また連絡します』

『じゃあ、明日』

今まではいつだってそういって、次回のことを匂わせた別れ際だった。それなのに、今日は……。

「……ケイトっ!」

急いで個室の扉を開けたけれど、もうすでに店の中に彼の姿はなかった。

わたし……本当にこれでよかったの? 

彼と距離をとらなければ、最終的に傷つくのは自分だと分かっていた。

七つ年下で、街ゆく人の視線を引きつけて止まない容姿。

それだけでも、結婚に焦っているようなわたしとは釣り合わない。

それに加えて、自らの力で世界を相手に仕事をして成功を収めているとなれば、世の女性達が放っておかない。

今は気まぐれでわたしにかまっているけれど、そんなのはいつまで続くか分からない。

わたしと彼の人生が、ほんの少しの間交わっただけ。

だからこの結果はわたしの願っていたものだ。

なのにどうして、こんなに胸が苦しいの?

最後に彼が残した「サヨナラ」の言葉が、頭の中に鳴り響く。

「……お客さま、お客様」

廊下に立ち尽くしていたわたしは、従業員の呼びかけでやっと我に返った。
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