【最愛婚シリーズ】極上CEOにいきなり求婚されました
第五章 忘れたい、忘れられない

第五章 忘れたい、忘れられない

頬を突き刺すような寒さを感じ、ぐるぐる巻きにしていたマフラーで顔を隠すようにして歩く。

寒さで目的地に向かう足がどんどん早くなる。

半地下にあるスペイン料理の店の重い扉を開けると、カウンターにはすでにひよりが座っていた。

「芽衣子さんっ!」

手を振る彼女に、マフラーを取りながら笑顔を返す。

「いつも待たせてごめんね」

カウンターに座るわたしに、メニューを差し出しながらひよりは頭を振った。

「待ち合わせの五分前ですよ。それにわたし今、暇なんで全然大丈夫です!」

ニコニコと満面の笑みを浮かべる彼女はとても幸せそうだ。わたしも久しぶりに心が明るくなったような気がした。

「何飲みますか? すみませーん」

ひよりの元気な声に、やってきた店員さんにここに来たらいつもオーダーするサングリアとアヒージョとトルティーヤを頼んだ。

するとそれまでにこやかにしていたひよりが、わたしの顔をじっと見つめる。

「ん? どうかした?」

「どうかした? じゃありません。芽衣子さん、ひどい顔してます」

ストレートないい方に思わず笑ってしまった。

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