【最愛婚シリーズ】極上CEOにいきなり求婚されました
しかしまだ何かモヤモヤとしてしまう。彼の言葉を思い出してみる。

「でも、圭人は〝昔のあなたは〟って言ったのよ。それってもっとずっと前のことのように思えない?」

「まぁ、確かにそうですよね」

行き詰まってしまったわたしはサングリアのお代わりを頼んで、小さくため息をつく。

「そもそも、わたしどうしたいんだろう」

これはこの間からずっと自分に問いかけている疑問だ。ひよりは面倒なそぶりなど見せずに、話を聞いてくれる。

「今になって、彼のことを調べたところで何も変らないの。また元のように楽しい時間だけを過ごせばいいのかっていうと……やっぱり違うし」

一緒にいればもっともっとと、求めてしまうだろう。

もっと好きになって、もっと会いたくなって、もっと彼のすべてを独占したいと思ってしまう。

けれど彼はそれを望まない。それはインタビュー記事で結婚を〝馴染まない〟と発言していたことから容易に想像出来る。

わたしと彼の向かうところが違う限り、一緒にいたところで結果は目に見えている。

わかっている。だからこそもう彼のことは忘れてしまって、さっさと次に向かえばいいだけの話。

今までだって何度か失恋を乗り越えてきた。なのに、どうして今回はすぐに立ち上がることができないんだろう。

「芽衣子さんは、どうしたいんですか。北村さんに会いたい?」

「……わからないの。怖いのよ」

「北村さんは、芽衣子さんが結婚に焦っている理由を知っているでしょう。だったらちゃんと話をすれば、前向きに検討してくれるんじゃないんですか?」

ひよりの言っていることも容易に想像できる。

結婚にこだわりもなく優しい彼ならば、もしかしたら籍を入れてくれるかもしれない。

「でも、それじゃダメなのよ。いつか彼が離れていくときに、わたしは耐えられそうにないから」

ぐっと唇をかみしめる。
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