総長さんが甘やかしてくる③


木良のハナシによると、稔の携帯の電話口には『稔でない男』がいたということだった。


――廃工場に一人で来い


それが、何者かわからない男からの要求。


「どこいくの、幻」


行き先なんて、一つしか、なかった。


「やめておきなよ。きっと罠だ。殺しはしないって、たぶん」

「…………」

「そいつ。信用できる?」


そう聞いてきた木良に


「俺よりはずっとまともな人間だ」


そう言い残し、その場をあとにした。

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