総長さんが甘やかしてくる③


自分のチームメンバーが俺にヤられていくのを笑って眺めているのを見て普通じゃないと感じた。


羅刹の総長は、噂通りのイカれた野郎だった。


同時に、察した。


稔を人質にしたのは俺を動けなくしてボコボコにするためじゃなく、俺の実力を確認するためだと。


仲間にならなければ稔をどうにかする気だ、とも。


総長の隣には、さっき倒したやつらよりも体格のいい男がついていた。おそらくは右腕なのだろう。


人質がいる状態で相手するのは厳しい戦いになるのが予想できた。どう考えても不利な状況だった。


「俺たちの仲間になれ。そうすればこいつは解放しよう」


こんな形で黒梦を抜けるわけには、いかない。

羅刹のメンバーになるつもりも、ない。


かといって


「陸上選手か。その足。さぞ大切なんだろうな?」


――稔を、見捨てるわけにはいかなかった。

< 111 / 272 >

この作品をシェア

pagetop