総長さんが甘やかしてくる③


天罰だと思った。

綺麗なものに触れた俺への。


「お前らの仲間になんてなるかよ」

「だったらこの男の足が使い物にならなくなってもいいんだな」


総長の隣にいた男がナイフを取り出し、稔に近づいた。


「やめろ」

「それは虫が良すぎるってもんだろう?」


究極の、二者択一だった。


いや。


このときには、もう俺は

稔を捨ててまで黒梦に残る気なんてなかった。


黒梦が、要らなくなったわけじゃない。

稔を守れるのは俺しかいないと思った。


「わかった。お前らの仲間になろう」

「聞き分けがよくて嬉しいよ」


そういうと、稔に近づけられたナイフで――。


「解放だ」


稔を縛っていた縄は、解かれた。

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