総長さんが甘やかしてくる③


稔の無事を目にして胸を撫で下ろしたとき


『きっと罠だ』


木良の忠告が、脳裏をよぎった。


『やめておきなよ』


仲間の言葉に、もっと耳を傾ければ。


木良のことを、信じてやれば。


俺は、

鬼なんて呼ばれることもなかったのかもしれない。


「うまくいったな、稔」


――耳を疑った。


「だから言ったでしょ。こいつ、情に訴えかけるのがいいって」


縄から解放された稔が、羅刹の総長に、微笑みかけ。


そのあと、俺を見てこう言った。


「俺、この人たちに協力してた」


悪びれた様子もなく、あっけらかんと言う稔を呆然と見つめることしかできなかった。

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