総長さんが甘やかしてくる③


「試すようなことしたのは、悪かった。でもよ、この人たち、俺こ足を本気で壊すつもりなかったんだ。この顔の怪我はニセモノだし、酷いことはされてない」


平気で話を続ける稔が信じられないでいた。


「むしろ、これでよかったんだ」

「……これでよかった?」

「お前が倒したの、非行に走ったりして手に負えないメンバーなんだってさ」


よくも悪くも、稔は、純真だった。

羅刹の総長の言葉を鵜呑みにし、善悪の区別がついていなかった。


「それに。支援してくれるって」

「支援?」

「陸上にかかる金、総長さんが貸してくれるって。これで兄ちゃんに無理させなくて済む」


稔は暴走族がどういうものかなんてことも。

羅刹の卑怯さにも、まるで気づいていなかった。


稔が兄へ長年抱いていた

“自分が負担になっている”

そんな感情を利用されたのだろう。


「聞けば高清水のいる黒梦ってチーム危ないらしいな。だったらここで走りなよ。俺も仲間に入れてもらえることになってる」

「失せろ」

「え?」

「俺の前から今すぐに失せろ」
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