総長さんが甘やかしてくる③


生臭い廃工場が静まった頃にやってきたのは


「やっぱりこんなことになってるし」


木良と


「やってくれたな。幻」


――当時の黒梦の総長、林(ハヤシ)さんだった。


いくら事情があれど

重体、重症の人間を多く出したのだ。


ただじゃ済まない。


目の前でワゴンに乗せられていくのは、命に関わるケガをした連中。


「まとめて燃やしちまうか。それとも。山にでも埋めるか? ん?」


林さんは笑っていた。

微笑み、怒っていた。


こうなる前に止めなかったことを。


どうしてはやく呼ばなかったのだと。

そんな林さんの気持ちが笑顔に表れていた。


「全責任とる気でいます」


黒梦追放は間逃れないと。

それだけじゃ、済まないと。


脱退を覚悟した俺に、林さんは告げた。


「だったらお前が頭になれ」

「……え」

「そろそろ引退考えてたしな。ちょうどいい。そんで木良、お前が副総長な」

「それは睡眠妨害になりそうで頷きかねるんですけど」

「そんなこと言うな」


殺気を消した林さんは


「部下の責任は。俺の責任」


俺のやったこと全てを、見逃した。

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