総長さんが甘やかしてくる③
俺が黒梦を抜けると発言したことは白紙になり。
ここまで独断で問題を大きくしたことには、目をつむられた。
「でも。俺が責任とらなくても、お前は、なんとでもしてしまうんだろうな」
黒梦の残されたメンバーは、突然の総長引退、そして俺の総長就任にザワついた。
廃工場での出来事を知るものは限られ、口に出すことはタブーとなった。
林さんが言った通り
その事件が警察沙汰になることはおろか
世間に広まることが一切なかったのは
「そんな顔しなくていい。なあに。私の子供時代に比べれば可愛いものさ」
祖父が、各所に手をまわし、食い止めたからだ。
捕まりもしなければ
学校にもこれまで通りかよわせてやると言われた。
「お前の兄さんたちは、頭はいいが、つまらない男だ。エリートといわれる道を進み、翌々は政治の道に足を踏み入れる気でいるようだが。幻(まほろ)。お前は好きに生きるがいい」
「でしたら、俺は――」
高清水の姓を、捨て
生みの母の姓である【川崎】になり。
これまで通り似合わない名前を呼ばれることを苦手とし、仲間からは『ゲン』と呼ばせた。