総長さんが甘やかしてくる③

――Sランクの純情な少女


かつて木良から聞かされたときに描いたイメージとは違った、霞。


「はあ。あの幻があたしの部屋にいるなんて、夢みたい」

「好きだねえ」

「ずっとファンだったんだもん! 嬉しいにきまってる」


それでも霞は、木良が関わるには珍しいタイプだということがわかった。


木良は、女関係が広く浅い。

ところが霞とだけは関係を変えずに付き合いを続けていたのだ。


幼なじみとして出逢ったからなのだろう。

それでも周りに寄せ付ける女とは随分と雰囲気が違っていた。


話してすぐに

“こちら側”の人間でないとわかった。


木良は、他人との距離感が近いようで遠い。

顔は広くとも特定の人間とつるむことを滅多にしたがらない。


たとえ黒梦のメンバーでも自分より下にみなしたものに心はみせない。


だから木良にとって霞は特別な存在であり。


見る限り、霞と林さんくらいだった。


木良が木良らしくいられたのは。


林さんが木良を黒梦に繋ぎ止めていた。


俺は、そんな木良から林さんを奪ったんた。
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