総長さんが甘やかしてくる③
母親と新しい父親との間に生まれた、年の離れた弟を母親が可愛がっている。だからあの家に居場所なんてない。お母さんと二人で暮らしてた頃に戻れたら、と。そんなことを言っていた霞は、寂しげだった。


「あの子は、なんにも悪くないし。可愛いのに。なんだか弟って感じには思えないし……ときどき憎い。そんな自分が嫌になる」


そんな霞をみて、俺の兄たちは、少なからず俺のことをそんな目で見ていたのかもしれないと。自分と重ねた。


「おかえり、幻」


それからは帰ると当たり前のようにいたり。


「あー、また喧嘩したでしょ」


放っておきゃ治る傷の手当をしてきたり。


「おいしーね」


一緒に飯を食ったり。


正直一人の方がラクだと思いながらも、霞といることに心地良さを幾らか感じていた。
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