総長さんが甘やかしてくる③


どういうことだ。

菊地さんの娘……?


「娘さんは。どこにおられますか」

「幻の部屋で寝てるよ」


…………!


菊地さんに娘がいるなんて話は初耳だ。

ユウと電話で話したのは、菊地さんの娘だった?


だとしたら燐の読み――相手が羅刹の姫という憶測は外れたのか?


「眠らされた、といった方が。正解かもしれないがな」


……眠らされた?


「お会いすることはできますか」


なあ、幻。

どこへ消えたんだよ。


俺たちになんにも言わずに――


「優しくしてやってくれよ? 傷心中だから」

「それは。幻が傷つけた、ということでしょうか」

「言わせんな」


彼女から幻の居場所を聞き出す必要がある。

なるべく早急に。


しかし

いきなり三人で踏み乗めば、警戒させてしまうだろう。


燐は、相手が女子だろうとかまわず手荒なことしかねない。


夕烏を連れてくるのも避けたい。


……まずは、俺が一人で会うか。


「お邪魔します」

「邪魔するなら帰れってんだ」

「そこをよろしく頼みますよ」

「なあ、坊ちゃん。酒は強いか?」

「未成年にする質問じゃないですね」

「細かいことは気にすんな」

「……まあ。弱くはないでしょう」

「はは。結構なこった。入ればいいさ」
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