総長さんが甘やかしてくる③


幻の部屋の扉を開けて、すぐに違和を感じた。


来るのは久しぶりだが――


(甘い香り)


おそらくは、香水だろう。


靴を脱ごうとして

足元にある女物の革靴に目がいく。


たしかに、中に、女子がいる。


ゆっくり部屋に視線を向けると

薄暗い部屋でベッドに横たわっていたのは、金髪の少女だった。


(まだ眠っている……ようだな)


起きるまで待つなんて悠長なことは言っていられない。


だいたい、こんな光景。


(……ユウに見せてたまるかよ)


俺でも、動揺した。

幻の部屋に知らない女がいるなんて。


寝床、使ってるなんてよ。


菊地さんの娘だっていうなら

つまりは幻にとって、妹のような存在ってことか?


どうして秘密にしていた。

いや、敢えて話すようなことでもないか。


俺から聞いたこともなかったしな。

……アイツに夕烏以外の親しい女がいるなんてこと。


「起きてくれ」


少女の肩を、小さく揺さぶる。


「頼む」


次第に揺さぶる力を強くしていくと


「ん……」


ゆっくりと、少女のまぶたが開いた。
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