総長さんが甘やかしてくる③
「君は、ひょっとして。格闘技の経験者か?」
「わかっちゃった?」
いくら女子で油断していたからといって
素人相手であれば、こんなふうに動きを封じられることはない。
もっとも、
突き飛ばしていいならふりほどけるが――
「優しいんだね、シュウくんは」
女子相手に手荒なことできるかよ。
「幻には。愛する女がいる」
「……だから?」
「なかったんだろ。過ちなんて」
俺の言葉に
強気な少女の瞳が、揺れた気がした。
「知ってるよ。幻に、本命がいるってことは」
声が
どことなく弱々しく感じるのはなぜだ?
「拍子抜けだよ。恋愛に夢中な幻なんて、ダサすぎ。昔はカッコよかったのになあ」
「昔のことはわからない。それでも。今の幻は男前だと、俺は思う」
「女の子に乱暴したり。恥かかすのに?」
「……乱暴?」
「さっき。ここであたし、幻に。呼吸止められるかと思ったんだよね」
幻が、この子に、乱暴を……?