総長さんが甘やかしてくる③


あり得ない。


なにがあったかは知らねえが。


菊地さんの娘を、
幻が大切にしないわけない。


「幻ってさ。あの子のためなら、なんだってしちゃうんだろうね?」


…………!


「取り乱してるとこ。初めて、見た」


あの子、というのは
おそらくはユウのことだろう。


「最終的には、折れてくれたよ。あたしに、とびきりの思い出つくってくれたの」


たしかに幻は

ユウのためなら、なにをするかわからないところはある。


「連絡とれないの? それってさ。あたしに手を出したから単純にうしろめたいんじゃない? また、ひょっこり現れるでしょ。なにもなかったみたいな顔してさ。愛するお姫様の前に――」


だが、


「君の言葉は信用できない」


幻を信じよう。


いくら菊地さんの娘だからって

俺は、この少女に甘い顔する義理ねえからな。


「敵だから?」


“敵”


その言葉で、確信した。


コイツは


羅刹の姫――カスミだ。
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