総長さんが甘やかしてくる③


冗談っぽい笑顔を見せてきたかと思えば、


「なにを考えている」

「わかるでしょ?」


首を傾け、甘い声で、


「男と女が、二人きりで。ベッドの上ですることなんて。ひとつしかない」


耳元で、囁いてくる。


「バカなこと言うな。会ったばかりの相手だぞ」

「カンケーないよ。あたし、気分屋なの」


本気か?


「なんなら取引をやめても、いーんだよ。そしたらあなたは幻を追えなくなる」



いいや、おそらくは

…………試されている。


カスミの機嫌を損ねさせてはならない。

かといってこの誘惑に乗るわけにもいかない。


どうする?


こうしている間にも幻は――……


「切なくて、仕方ないの」


セツナイ?


「あなたが満たしてくれたら。お願い、聞いてあげる」

「……拒否権は、ないらしいな」


俺の言葉に、カスミが口角をあげる。


「さすが、どんなときも冷静で頭脳派なシュウくん。呑み込んでくれるよね?」


俺を取り押さえるカスミが力を抜く。


やわらかい身体を持ち上げ、ベッドに横たわらせた。


覆いかぶさると、

まるで抵抗しない彼女から、はやくしろとせがまれている気がしてきた。


「後悔しないのか」

「しないよ? こっちから誘ったんだから。好きにしていーよ、あたしのこと」
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