総長さんが甘やかしてくる③


カスミの顔は、寂しげにみえる。


「ズルいよー……。あたしのこと、遠ざけておいて。新顔のアンタとは。こんなに仲、深めてるとか。男だったら。あたしは、今でも幻にかまってもらえてた?」


これは、演技か?


俺に幻の居場所を教えないための。

時間稼ぎ……なのか?


本当に?


「はあ。誰でもいいから。埋めてもらおうと、思ったのにな」


…………いや、ちがう。


【優しくしてやってくれよ? 傷心中だから】


菊地さんは、
嘘であんなことを言わないだろう。


解放してやると

身を起こし、ベッドに腰掛けるカスミ。


足を組み

うつろな瞳で部屋のすみを見つめている。


――そうか


「君は。幻を、愛しているんだな」

「…………笑っちゃうよね」

「思いを伝え。フラれたのか」

「んーん。告白すら、させてもらえなかった」

「なんだと?」

「くだらない女だなーって、思う。自分のこと」
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