総長さんが甘やかしてくる③
どうしてカスミは羅刹の姫なんてやっているのだろうか。
こんなに幻を思っているなら。
なにも敵になることないだろう?
いや。
幻を思っているからこそ、なのか?
羅刹の総長は、元黒梦の副総長である木良。
その木良についているのは、
どんな思惑があるんだ?
わからない。
ただひとつ、たしかなのは。
なんとしても幻に会わなければいけないということだ。
これまで踏み込んでこなかったが。
今日という今日は、聞かせてもらおうじゃないか。
羅刹との因縁を。
木良との過去を。
たとえそれを聞き出すのがタブーだとしても。
知りたいんだ、俺が。
黒梦のこと、というよりは
幻という男のことを。今よりも。
「君が言っていたとおり。俺の弱点は、女子だ。年が近いほど接するのが苦手だという自覚がある」
「……ダサ」
「なんとでも言え」
「アンタなら。いくらでも相手いるでしょ」
「いねーよ」
「……え?」
「もし、君が俺の大切な子だったなら。今すぐ慰めてやりたいと思う。君が心から笑えるよう、できる限りの努力をするだろう。男として。或いは仲間として。その両方かもしれない。不慣れだとか苦手なんて関係なく」
「!」
「俺は、君と過ちを犯すわけにはいかない。幻のことを見捨ててまで欲望を優先させる気もない」