総長さんが甘やかしてくる③


守るべきものがなければ。

いいや。


「出会い方さえ違えば、ガッついたかもしれない」

「……うそくさ」

「本当だ。いくら出会ったばかりで。そこに気持ちがなくても。雰囲気でそういう気分になるのが、男だ。ましてや君は、そんなにも魅力的なんだからな」

「今更そんなこと言っても。あたしの機嫌とれないからね」

「別に機嫌をとりたいわけじゃない。思ってもないことを言って君を喜ばせるなら。最初からズルく近づいただろうが。俺には、そんな器用さもなければ。相手を欺いて自分だけが利益を得るなんて、性に合わない。いくら敵でもな」

「っ、なにを言われても。あたしは黒梦に協力したりなんか――」

「……せめて。ズボンを履いてくれないか」

「え?」

「目のやり場に困る。無防備にもほどがある。俺は、なにもしないが。他の男なら、なにされるかわからない。だから、もっと。……自分を大切にしろ」


すると、カスミは

ぶはっと噴き出して笑った。


「だから。バカ正直すぎなんだって。シュウは」


途端に、無垢な少女になった。


これだから女子は本当によくわからない。


「呼び捨てかよ」

「ほんと、つまんない男」

「否定はしない」

「しなよ」

「男としての魅力が。自分にあるかと言われると正直なところ微妙だ」

「キライいじゃないよ」

「……は?」

「うん。キライいじゃ、ない」
< 161 / 272 >

この作品をシェア

pagetop