総長さんが甘やかしてくる③
守るべきものがなければ。
いいや。
「出会い方さえ違えば、ガッついたかもしれない」
「……うそくさ」
「本当だ。いくら出会ったばかりで。そこに気持ちがなくても。雰囲気でそういう気分になるのが、男だ。ましてや君は、そんなにも魅力的なんだからな」
「今更そんなこと言っても。あたしの機嫌とれないからね」
「別に機嫌をとりたいわけじゃない。思ってもないことを言って君を喜ばせるなら。最初からズルく近づいただろうが。俺には、そんな器用さもなければ。相手を欺いて自分だけが利益を得るなんて、性に合わない。いくら敵でもな」
「っ、なにを言われても。あたしは黒梦に協力したりなんか――」
「……せめて。ズボンを履いてくれないか」
「え?」
「目のやり場に困る。無防備にもほどがある。俺は、なにもしないが。他の男なら、なにされるかわからない。だから、もっと。……自分を大切にしろ」
すると、カスミは
ぶはっと噴き出して笑った。
「だから。バカ正直すぎなんだって。シュウは」
途端に、無垢な少女になった。
これだから女子は本当によくわからない。
「呼び捨てかよ」
「ほんと、つまんない男」
「否定はしない」
「しなよ」
「男としての魅力が。自分にあるかと言われると正直なところ微妙だ」
「キライいじゃないよ」
「……は?」
「うん。キライいじゃ、ない」