総長さんが甘やかしてくる③
――玄関の扉が閉まる音がして目が覚めた。
(幻が戻ってきた……?)
ううん、それはない。
どのくらい意識を失っていたかわからないけど
いくらなんでもはやすぎる気がした。
だったら
――そこにいるのは、誰……?
眠ったフリして
相手の出方を探るしかないと、思った。
「起きてくれ」
相手は、男。
声のトーンは低く。
ここであたしが眠っていることに
動揺していないみたい。
落ち着いている。
足音からして、入ってきたのは一人。
奥にまだ仲間がいないとも限らない。