総長さんが甘やかしてくる③


「驚かせてしまってすまない」

「なんなの。いきなり」


半分、演技。

もう半分は、本気で、焦った。


「怖がらないで欲しい。君に危害を加える気は少しもない。俺は、幻の友人だ」


話に聞いていたよりもずっと、

オーラがあったし。


「……幻の。友達?」


なにより、木良と幻以外の男とは部屋で二人きりになったことがない。


だから

噂でしか知らない男を目の前にして、固まりそうになった。


「ああ、そうだ」


圧倒された。


それでも、


「ほんとに?」


平静を装えたのは

あたしは羅刹の姫だって自覚があったから。


「本当だ」


この男を引き止めなきゃ。

木良を追いかけた幻を、仲間に追わせるわけにはいかない。


「じゃあ。友人くんに、聞くけど。さっきまで、このベッドで幻とあたしが愛し合っていたって言ったら。どーする?」

「……は?」


動揺させて。


「あなたの知らない幻を。あたしは、たくさん知ってるよ」


惑わせて。

時間、少しでも稼がなきゃ。

< 173 / 272 >

この作品をシェア

pagetop