総長さんが甘やかしてくる③
「驚かせてしまってすまない」
「なんなの。いきなり」
半分、演技。
もう半分は、本気で、焦った。
「怖がらないで欲しい。君に危害を加える気は少しもない。俺は、幻の友人だ」
話に聞いていたよりもずっと、
オーラがあったし。
「……幻の。友達?」
なにより、木良と幻以外の男とは部屋で二人きりになったことがない。
だから
噂でしか知らない男を目の前にして、固まりそうになった。
「ああ、そうだ」
圧倒された。
それでも、
「ほんとに?」
平静を装えたのは
あたしは羅刹の姫だって自覚があったから。
「本当だ」
この男を引き止めなきゃ。
木良を追いかけた幻を、仲間に追わせるわけにはいかない。
「じゃあ。友人くんに、聞くけど。さっきまで、このベッドで幻とあたしが愛し合っていたって言ったら。どーする?」
「……は?」
動揺させて。
「あなたの知らない幻を。あたしは、たくさん知ってるよ」
惑わせて。
時間、少しでも稼がなきゃ。