総長さんが甘やかしてくる③


そうだよ。

悲しいくらい、なにもなかった。


「知ってるよ。幻に、本命がいるってことは」


声が、震えそうになった。

それをなんとかおさえることができたと思う。


「昔はカッコよかったのになあ」


なんて。

そんなこと、思ってない。


カッコいいよ、幻は。

今も昔も。


ううん。

きっと、今のほうが、カッコいい。


幻は、益々いい男になってるんだろうね。


羨ましい。

幻に愛されている、あの子が。


憎い。


幻の傍に当たり前のようにいる、アンタだって、憎いの。


それに、そこは

……木良のいた場所なんだから。


「昔のことはわからない。それでも。今の幻は男前だと、俺は思う」


――――黙れ


「女の子に乱暴したり。恥かかすのに?」


アンタの中の幻のイメージ

あたしが、とことん落としてあげる。

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