総長さんが甘やかしてくる③


――正門愁太郎


警察の上層部を父に持つ男。

夕烏は、そんなやつの家に上がり込んでいる。


やつが、夕烏を変えたのか?


それとも。


――川崎。


黒梦の総長。


夕烏と、あの夜にファミレスにいた男。


そいつが夕烏を変えたというのか?


あんな連中といるのがお前の幸せなのか?


もしも、あの町に留まる理由が

仕事でも自由でもなく

“男”なのだとしたら、放ってはおけない。


夕烏が誰かを愛することを許さない。

俺と結ばれる以外の道を選ぶな。


ひとりぼっちだった夕烏のこと

ずっとずっと、想ってきた。


どこにも逃がさず

目の届く範囲に、置いてきた。


俺よりあいつを愛してやれるやつは、いない。

あいつが受けた苦しみを一番に理解してやれるのも、俺だけだ。


おい、夕烏。


お前が腹が減っていたとき

手付かずのサラダ、食わせてやったろ。


……食えるのに、苦手だと偽って。


離れに毛布を用意してやったろ。

あの女の目を盗んでやれることなんて、限りがある。


今はまだ正面から守ることはできない。


それでも覚悟はずっと前からできている。


人生をかけて、幸せにしてやる。


幸せにしてやるとも。
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