総長さんが甘やかしてくる③
…………フリ?
どうして?
あるなら、あるって言えばいいでしょ。
「気持ちが通いあってこそだろう?」
あたしだって。そう思ってた。
でも、できないから。
あたしの好きな人は、あたしを見ていないから。
「君は。男心をくすぐるのが、上手い。出会い方さえ違えば、ガッついたかもしれない」
「……うそくさ」
「本当だ。いくら出会ったばかりで。そこに気持ちがなくても。雰囲気でそういう気分になるのが、男だ。ましてや君は、こんなにも魅力的なんだからな」
「今更そんなこと言っても。あたしの機嫌とれないからね」
シュウの言葉、ひとつひとつに
心が乱されている自分に気づいた。
こんなの、
幻といるときにしか感じたことないのに。
「別に機嫌をとりたいわけじゃない。思ってもないことを言って君を喜ばせるなら。最初からズルく近づいただろうが。俺には、そんな器用さもなければ。相手を欺いて自分だけが利益を得るなんて、性に合わない。いくら敵でもな」
ほんの少し、わかった気がした。
幻がシュウのこと気に入ったわけが。
放っておけない理由が。
信用して傍に置ける、意味が。