総長さんが甘やかしてくる③


…………フリ?


どうして?

あるなら、あるって言えばいいでしょ。


「気持ちが通いあってこそだろう?」


あたしだって。そう思ってた。

でも、できないから。


あたしの好きな人は、あたしを見ていないから。


「君は。男心をくすぐるのが、上手い。出会い方さえ違えば、ガッついたかもしれない」

「……うそくさ」

「本当だ。いくら出会ったばかりで。そこに気持ちがなくても。雰囲気でそういう気分になるのが、男だ。ましてや君は、こんなにも魅力的なんだからな」

「今更そんなこと言っても。あたしの機嫌とれないからね」


シュウの言葉、ひとつひとつに

心が乱されている自分に気づいた。


こんなの、

幻といるときにしか感じたことないのに。


「別に機嫌をとりたいわけじゃない。思ってもないことを言って君を喜ばせるなら。最初からズルく近づいただろうが。俺には、そんな器用さもなければ。相手を欺いて自分だけが利益を得るなんて、性に合わない。いくら敵でもな」


ほんの少し、わかった気がした。

幻がシュウのこと気に入ったわけが。


放っておけない理由が。


信用して傍に置ける、意味が。

< 185 / 272 >

この作品をシェア

pagetop