総長さんが甘やかしてくる③
覚えているか。
以前、一度だけ。
お前に近づこうとしたことがあったろ。
【よく育ってんな。俺のドレイになるか】
見ていられなかったんだ。
心を鬼にしきれなかった。
だから――。
【身体使って奉仕しろよ、夕烏】
あんなことを言った。
【いい思いさせてやるから】
慰めてやりたくて。
抱きしめてやりたくて。
……愛して、やりたくて。
そんな俺をお前は、拒絶したな。
【お断りします】
あの言葉に俺は頬が緩んだ。
バカにしたかったわけじゃない。
操り人形のクセして
信念を持っているお前が好きだ。
改めて、お前が欲しいと確認させられたよ。
俺はお前をドレイになんてしたくない。
言いなりになる女なら腐るほどいるが。
寄ってくる女みんな、いらないんだ。
お前になにか求める以上に。
――俺が、お前に尽くしたい。
あの女のためでなく。
夕烏のために、生きていきたいんだ。
お前以外の女を相手してきたのは
お前に向けられない気持ちを発散させたかった。
お前への気持ちを誰かに悟られたくなかった。
ただ、それだけだ。