総長さんが甘やかしてくる③
「愁」
燐が、助手席から降りて傍にやってくる。
「出てくんな。ユウのとこいろ」
「ほんとに一人で行くつもり? 様子ならボクが見てくるよ?」
「勝手に暴れられちゃ困るからな」
「カッコつけちゃってー。かわいい女の子三人の前だから、張り切ってる?」
カウントおかしくねえか。
「女子二人と、サイコ野郎だろ」
「やーん。ボクは愁の前では、オ・ン・ナ・ノ・コ♡」
「語尾にハートつけんな」
燐と俺のいつものじゃれ合いを車の中から見ていたカスミが、顔を引きつらせている。
言いたいことはわかるぞ。
こんなやり取りをツッコミなしに――というよりは微笑ましいとさえ感じている、うちの姫は、異例だろうからな。
「ねえ、シュウ。ほんとにそのガキ。黒梦のメンバーなの?」
「こっちの台詞だよー? 羅刹の姫って、すごーく美人って聞いてたんだけど。ボクの方がキレイだなあ」
「はあ?」
「骨抜きにされてないかって、心配したのに。杞憂だったな〜」
オイコラ、燐。
今ケンカふっかけてる場合じゃないだろうが。