総長さんが甘やかしてくる③
いつの間にか、好きになってた。
見た目がかわいいから、ってのはそこまで理由じゃない。
とにかく彼女は他の子とは違ったんだ。
「木良、夏休みの自由研究した?」
「そんなのあるの?」
「え……そこから?」
近所に住むかすみは、引きこもりがちな僕の家によく遊びに来た。
「意味ないものは、やりたくないな」
「またそんなこと言ってサボる。2学期は毎日来なよ」
「行かなくても卒業できるのに?」
「木良ってあんまり授業でなくてもなぜかあたしより成績いいよね……世の中不公平だ」
「まあ、要領の悪い君は、僕の何倍も努力してればいい」
「ひどい」
「もう帰れよ」
「昆虫捕まえに行かない?」
「は?」
かすみは、物心ついたときから学校や近所の連中に「アイドルだね」「本当に可愛い」と、もてはやされて育ってきた。
甘やかされるのには慣れている。
なのに、お高くとまるわけでもなく、夏は麦わら帽子をかぶって虫かごをさげて昆虫を手で掴んでいるような女の子だった。
「暑いし虫いるし日焼けするから帰ろ」
「見て! こんなに捕まえた」
「げ……キモい」
かすみの虫かごにはセミが大量に捕獲されていた。
「どの子を観察しようかな」
「まだカブトムシとかの方がカッコよくない?」
「いないんだよねー。クワガタも」
「はやく解き放とうよ」
「ダメ。ちゃんと観察してから。あ、写真も撮らなきゃ」