総長さんが甘やかしてくる③


「聞いて、木良。リレーで優勝したの!」

「へえ」

「なんで来なかったの? 体育大会」

「寝てた」


かすみが一着でテープを切るところは、容易に想像できた。


「怪我してる」


綺麗な身体についていた、かすり傷。

活発なかすみが怪我や青あざを作るのは、日常茶飯事だった。

どんくさいから階段でぶつけるなんてこともしていた。


「え?……ああ、これはね。組体操で」

「怪我するくらいなら参加しなきゃいーのに」

「だって、一生の思い出でしょ。このくらいの怪我すぐ治るよ」


俺のそばにいたら怪我なんてさせないのにと、そう思わずにはいられなかった。

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