総長さんが甘やかしてくる③
距離感の近い子だった。
「またゲームしてる」
「ゲームじゃないよ」
こっちが照れていることに気づきもせずに横からパソコンを覗き込んでくるなんてよくあることで。
「じゃあなに?」
「ハッキング」
幼い僕は彼女が傍にいるとドキドキを誤魔化すのに必死だった。
「はっきんぐ? なにそれ?」
「んー。他人のパソコン覗いてる」
「え。それってハンザイじゃないの!?」
「うん」
「悪趣味だよ、木良」
「担任のヒミツが握れた」
「……聞かなかったことにする」
ズルいこと、イケないことを重ねていく僕に彼女は呆れはしたが、止めることはしなかった。
正義感の強い子には違いないんだけど、そうやって僕を甘やかすんだ。
どんどんハマっていった。
かすみにだけは。
中学にあがると、
「キミ、かわいいね」
知らない女の先輩に可愛がられた。
僕といえば嫌でもなかったから
なんとなく誘いに乗って、授業サボって、恋人同士でやるようなことやってるうちに、どんどんエスカレートして。
気づけば、かすみは陽のあたる場所にいて
僕からずっと遠くに行ってしまっていた。
それでも、
「木良」
「なに」
「授業サボってどこ行ってるのー?」
「さあね」
僕の部屋には変わらずやってきて。
頻度こそ減ったが、当たり前のように出入りした。
そんな、かわいい君は。
「どうしよう。好きになっちゃった」
「……は?」
「黒梦の幻!」
ある日、大きな爆弾を落とした。