総長さんが甘やかしてくる③


黒梦には、力のあるやつは揃っていたが、頭の切れる者はそう多くなかった。


「すごい色」

「変?」

「ううん。綺麗だね」

「次は青くしてみようか」

「赤のままがいい」


そういって、かすみが僕の髪に触れてきた。


「……維持するの大変だな」

「たしかに難しそう」

「すぐに色が落ちるから面倒なんだ」

「お金、かかったでしょ?」

「やってもらったから。タダ」

「あー。もしかして、女のひとに?」

「そんなところ」


僕がそのあと黒髪に戻したとき

どこかに赤いメッシュを混ぜていたのも


高校に入ってまた赤く戻したのも


君が、綺麗だと言ったからなんだけど。


……忘れてるんだろうな。


『木良くん遊ぼ』
『キスしよ?』


他の子は、あっさり僕を欲しがるのに。


「相変わらずモテるよねー、木良。授業抜けてるのも女の子と遊んでるから?」

「だったら?」

「別に」


物足りなかった。


「かすみちゃん」

「なに、ちゃん付けてるの」

「昔は付けてたなと思って」

「そうだっけ」

「かすみちゃんのことも。かわいがってあげよーか」

「あたしは幻一筋だし」

「へえ」


僕は

会話すらしたことのない幻に、ひどく嫉妬していた。


だから。


「ねえ、幻」


――――近づいた。
< 217 / 272 >

この作品をシェア

pagetop