総長さんが甘やかしてくる③
黒梦には、力のあるやつは揃っていたが、頭の切れる者はそう多くなかった。
「すごい色」
「変?」
「ううん。綺麗だね」
「次は青くしてみようか」
「赤のままがいい」
そういって、かすみが僕の髪に触れてきた。
「……維持するの大変だな」
「たしかに難しそう」
「すぐに色が落ちるから面倒なんだ」
「お金、かかったでしょ?」
「やってもらったから。タダ」
「あー。もしかして、女のひとに?」
「そんなところ」
僕がそのあと黒髪に戻したとき
どこかに赤いメッシュを混ぜていたのも
高校に入ってまた赤く戻したのも
君が、綺麗だと言ったからなんだけど。
……忘れてるんだろうな。
『木良くん遊ぼ』
『キスしよ?』
他の子は、あっさり僕を欲しがるのに。
「相変わらずモテるよねー、木良。授業抜けてるのも女の子と遊んでるから?」
「だったら?」
「別に」
物足りなかった。
「かすみちゃん」
「なに、ちゃん付けてるの」
「昔は付けてたなと思って」
「そうだっけ」
「かすみちゃんのことも。かわいがってあげよーか」
「あたしは幻一筋だし」
「へえ」
僕は
会話すらしたことのない幻に、ひどく嫉妬していた。
だから。
「ねえ、幻」
――――近づいた。