総長さんが甘やかしてくる③
「また喧嘩したんだ?」
最初は返事がほとんど返って来なかった。
幻は誰よりもクールなやつだったから、僕からグイグイ迫った。
そんな僕だって人と関わりたくないタイプなのにね。
気づけば僕に寄ってくる女の前で振る舞うように、作り笑顔を幻に向けていた。
「え! 幻と話したの!?」
「一方的にって感じかな。今日も誰かとケンカしてたみたい」
「いいなー。あたしも連れて行って!」
あんなところに君を連れて行けば幻と仲良くなる前に他の男に口説かれて大変だろうね。
「いやだ」
「ええっ」
「林さんがさ」
「総長の?」
「うん。幻と僕をやたらと可愛がってくれるんだよね」
「へー!」
「三人で飯行ってきた」
「えええ!? 幻とご飯!?」
「幻は塩ラーメン頼んでたなぁ」
「あっさりが好きなのか!!」
かすみは、僕から幻のどうでもいい情報を聞いてはオーバーすぎるくらい嬉しそうにしていた。
「木良は、とんこつ頼んだんでしょ」
「え?」
「違うの?」
「……頼んだけど」
「やっぱり」
「なんでわかるかな」
「ずっと小さい頃から一緒なんだよ。木良のことならわかるよ」