総長さんが甘やかしてくる③
燐さんに呼ばれ、愁さんがやってくる。
「なんだよ」
「これ、ユウちゃんの部屋に運んで」
どうやらチェストを移動してもらおうと愁さんを呼び出したみたいだ。
「あ? こんくらい運べるだろ」
「無理だよー。箸より重いもの持ったことないし」
燐さんそれはオーバーです。
「物騒なもん振り回してるんじゃねぇのか」
「あれは100グラムくらいしかないもん☆」
あ、あれって……
「箸より重いだろーがボケ」
「あは。こういうとき男手があると助かるよねー、ユウちゃん」
うんうんと納得仕掛けてハッとする。
「テメェも男だろうが」
愁さんの言うとおり。
燐さんは女の子のように可愛い顔をしているが、男の子なのだ。
天使のような笑みに油断していたら、隠し持ったナイフで脅される……なんてこともあるかもしれない。
「ったく」
眉間にシワを寄せながらも、ひょいとチェストを持ち上げる愁さん。
小さめとはいえ、しっかりした作りなので軽くはなさそうなのに。
男の子って、やっぱりすごい。
「愁さん、ありがとうございます」
「お安い御用」
愁さんは、本当に優しい。
「いやー、でも、ビックリしたなぁ」