総長さんが甘やかしてくる③
かすみと幻は、上手くはいかなかった。
幻の態度を見ていればわかった。
彼女を遠ざける幻には
守りたいものがあった。
自分の傷ついた心と。
それから、チームだ。
黒梦を、大切にしていた。
(どこが鬼なの)
幻は、僕から言わせれば
誰よりも繊細なやつだ。
黒梦を抜けたあとの僕といえば、
「木良。ほんとにやるのか」
「もちろん」
霧切と、羅刹を立て直すことにした。
表向きは。
だけど――これは、復讐だ。
「やるなら、徹底的にしなきゃ」
幻を信用できないというやつらを集め。
新生羅刹を組み。
かつて幻を騙したやつらと、まとめて、消してしまう。
それが僕の計画さ。
ついでに黒梦もつぶしてやるつもりだった。
幻がまた、友情ごっこ始めたの、なんだか気に食わなかったからさ。
おまけに女まで作ってさ。
全部、バラバラにしてやろうと思った。
でも、今の黒梦にいる幻や。
バカっぽく見えた仲間の絆を目の当たりにした。
僕が邪魔したくらいで揺らぎはしなかったんだ。
「……そこは、僕の場所だったのに」
幻の隣は。
いつしか僕の居場所だったのに。
――稔が現れるまでは。
稔が、すべてを狂わせた。