総長さんが甘やかしてくる③
――薄気味悪い空間
その先に、人影が、三つ。
足場の悪いなか歩き進むと
そのうちの一人が幻だと気づく。
背を向けていて
「おかしいな。お客は招いてないんだけど」
そう言ったのは、赤髪の男だった。
「ギャラリー希望?」
――通称、“死神”
(…………木良か)
「幻、帰ろう」
呼びかけるも、振り返らない幻。
「ああ。誰かと思ったら、君か」
「俺を知ってるんだな」
「知ってるとも。黒梦の忠犬、シュウ」
「俺も有名になっちまったもんだ」
「幻が。くだらない友情ごっこを再スタートするきっかけになった、男」
「……なんだと?」
「そこ。僕のポジションだったのに」
木良のポジション?
「待てよ。お前は黒梦を追放されたわけじゃなく、自分で抜けた。そして羅刹に入り。総長までのし上がったんじゃないのか?」
それを、今になって
自分のポジションってのは
――おかしな話だろう?
『これは、木良の復讐なんだと思う』
カスミの言葉を思い出す。
『幻は、勘違いしてる。あたし、気づいたの。木良が黒梦を抜けたのは幻と喧嘩したからじゃない。羅刹に入ったのは、立て直したいからじゃなかった』
立て直す気ないのにトップに居座る理由。
それはなんだ?
考えろ。
どうして木良は――……