総長さんが甘やかしてくる③


「幻に花火しようって約束してたんだってね」

「なんで。……その、こと」


ミノルという男が、かすれた声でつぶやく。


散々叫んだからなのか。

喉を潰されかけたからなのかは、わからないが、声が枯れている。


「まだわかんないの? 羅刹には僕の犬を紛れ込ませていたんだ。だから君が調子に乗ってたこと。ぜーんぶ、つつ抜け」

「当時から羅刹にいて……そんなこと……知ってるのは……。まさか……霧切、か?」

「今更気づいたのか。ミノルくんはマヌケだね」


ミノルと木良にしか通じない話が交わされる。


いや。


「こんなの信じた幻は。もっと、マヌケ」


幻にも、通じているのか?


どうしてこっちを見ない?


まわりこんで

幻の表情を見ようとしたとき。


「やめろ……!」


ミノルが、叫んだ。

叫んだと言っても大きな声は出せないようだ。


「あー。それ以上動くと、ミノルくんから火だるまにするよ」

「……そういうことかよ」


人質がいるから、幻も動かねえのか。


……動けねえのか。


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