総長さんが甘やかしてくる③


「僕は、ミノルくんのしたこと全部知ってるし。ミノルくんの頭の中も見えてる」


絶望の表情を浮かべる、ミノル。

そんなミノルの前で。


あの幻が、身動き取れなくなってやがるのを。


俺は、ただ見ていることしかでなかないのか?


「あんまり、だ」


ミノルが囁く。


「こんな足になって。夢を、奪われた俺の。今度は、命まで奪うっていうのか?」


…………夢?


「別に。ただ、果たされなかった約束。俺が叶えてやろうと思ってね」


にこりと微笑むと、

木良は足元の袋から花火を一本取り出した。


「アホか。こんなとこで花火なんてしたら火の海だぞ」

「頭脳派の愁くんに、問題です。失敗したら、火をつけるよ」


――――!


「僕は、なんのために羅刹を立て直したでしょう」

「は……?」

「考える時間は10秒」


木良の声のトーンが下がる。


「10……9……」


(復讐。友情ごっこ。調子に乗った、ミノル)


「8、7、6、5……」


羅刹は、滅びかけたらしいが。

放っておいても消えただろう。


「4、3」


それを建て直して、壊す意味。


「あー、ミノルくん。おもらししちゃって。汚いなあ」


それは――


「崩すなら小さなモンより大きなモンの方が。……楽しいからか」

「まあ、正解だね」

「教えてくれ。その、ミノルって男は。生きる価値もないくらいのクズなのか?」


時間を稼いで。

全員を逃がすことが俺にできるか?
< 239 / 272 >

この作品をシェア

pagetop