総長さんが甘やかしてくる③
「僕は、ミノルくんのしたこと全部知ってるし。ミノルくんの頭の中も見えてる」
絶望の表情を浮かべる、ミノル。
そんなミノルの前で。
あの幻が、身動き取れなくなってやがるのを。
俺は、ただ見ていることしかでなかないのか?
「あんまり、だ」
ミノルが囁く。
「こんな足になって。夢を、奪われた俺の。今度は、命まで奪うっていうのか?」
…………夢?
「別に。ただ、果たされなかった約束。俺が叶えてやろうと思ってね」
にこりと微笑むと、
木良は足元の袋から花火を一本取り出した。
「アホか。こんなとこで花火なんてしたら火の海だぞ」
「頭脳派の愁くんに、問題です。失敗したら、火をつけるよ」
――――!
「僕は、なんのために羅刹を立て直したでしょう」
「は……?」
「考える時間は10秒」
木良の声のトーンが下がる。
「10……9……」
(復讐。友情ごっこ。調子に乗った、ミノル)
「8、7、6、5……」
羅刹は、滅びかけたらしいが。
放っておいても消えただろう。
「4、3」
それを建て直して、壊す意味。
「あー、ミノルくん。おもらししちゃって。汚いなあ」
それは――
「崩すなら小さなモンより大きなモンの方が。……楽しいからか」
「まあ、正解だね」
「教えてくれ。その、ミノルって男は。生きる価値もないくらいのクズなのか?」
時間を稼いで。
全員を逃がすことが俺にできるか?