総長さんが甘やかしてくる③

「おい木良……!」


木良が、オイルライターに火を灯す。


ミノルが、声にならない叫びをあげ、ジタバタするも。

拘束されていてまるで抵抗できていない。


「なに。黒梦の犬」

「愁太郎だ」

「シュウくん。どうしたの」

「どうして幻の傍にいなかった。離れる必要があったのか?」


俺の言葉に、木良の重たそうなまぶたが大きく開かれる。


「なにすれ違ってんだよ。幻は、お前が自分を恨んでると思っていたんだろ? だったらお前はその誤解とくべきじゃねーのか。復讐よりもなによりも」

「それは違う」

「いいや、違わねえよ」

「滅ぼさなきゃ。根こそぎ」


ミノルの動きが、ピタリと止まる。

気絶したようだ。


「要は、お前はそのミノルってやつが幻と仲良くしてたのにムカついてんだろ」


そうでなきゃ。

ここまで徹底的にやらないよな。


「あー……。そうなのかも」

「こんなことしてる時間あったら、幻と和解しろ」

「もうおそい」

「遅くない。俺は、頼まれたんだ」

「……なにを」

「幻と。それから、お前を無事に連れ出せと」

「誰に」

「お前の姫だ」

「……かすみ、ちゃんに?」
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