総長さんが甘やかしてくる③
カスミの名前を出した途端に動揺の色を見せる、木良。
「会ったの? あの子に」
「ああ。ヤケになってたぞ」
「ヤケに?」
「幻にフラれて。誰でもいいから相手して欲しいらしいな」
「かすみちゃんが。そんなこと言ったの?」
駒扱いしていたわけじゃ、なかった。
「もっと可愛がってやれよ。総長なら。お前んとこの、姫だろ?」
幻とカスミ。
どうにかくっつけてやりたかったんだな?
「そこまで来てる」
「なんで。かすみちゃん、こんなところに連れてくるんだよ」
「言っておくが人質じゃねえぞ。本人が来たがった。ここを特定したのも霧切って男だしな」
「今すぐ帰らせろ」
…………そろそろ10分たつな。
「まあ。ここから離れた頃だろうけどよ」
素直に言うこと聞いていればの話だが。
「カスミは。幻と僕の無事を願ったの?」
「ああ、そうだ」
「ふーん。じゃあ。ミノルくんたちは丸焦げでもいいよね」
「ダメです!」
突然、高い声が響いた。
入ってきたのは――
「……ユウ」
「ごめんなさい。話、聞かせてもらってました」
「こっち来んな」
「ミノルさんって。あの。違ったらすみません。……でも」
「そうだよ、黒梦のお姫様。ここにいるミノルは。君の上司であるサトルの弟さ」